風の歌を聴け◎村上春樹
を思い出した。
僕は夏になって街に戻ると、いつも彼女と歩いた同じ道を歩き、倉庫の石段に腰を下ろして 一人で海を眺める。泣きたいと思う時にはきまって涙が出てこない。そういうものだ。 「カリフォルニア・ガールズ」のレコードは、まだ僕のレコード棚の片隅にある。 夏になるたびに僕はそれを引っ張り出して何度も聴く。そしてカリフォルニアのこと考えながら ビールを飲む。 レコード棚の隣には机があり、その上には乾いてミイラのようになった草の塊りが ぶらさがっている。牛の胃袋から取り出した草だ。 死んだ仏文科の女の子の写真は引越しに紛れて失くしてしまった。 ビーチボーイズは久し振りに新しいLPを出した。 素敵な女の子がみんな、 カリフォルニア・ガールならね・・・・・・。
風の歌を聴けより一部引用