天然パーマです。

「グレート・ギャツビー」フィツジェラルド

村上春樹が最も影響を受けたとも言われる作家「フィツジェラルド」。 先日読んだ「ひらきこもりのすすめ2.0」においても、彼の名は出てくる。

著者渡辺さんと編集長太田さんとの対談の中で(P221より引用)

アメリカでは1920年代、第一次世界大戦で心に傷を負ったスコット・フィッツジェラルドや アーネスト・ヘミングウェイなどに代表される「ロストジェネレーション」 とよばれる偉大な作家達が派出しましたが、日本で90年代、つまり大人が負け続けた時代、 国がプライドを失っていく次代に十代を過ごした人たちにも、 同様のことが起こるのではないかと思っているんですよ。

「ロストジェネレーション」。はっきり言って俺には意味を完全に汲み取ることができない。 ただ、響きがすごく好き。 そういう経緯でフィツジェラルドの代表作「グレート・ギャツビー」を読んでみた次第だ (最近村上春樹本人による訳書が発売されたが、今回読んだのは野崎孝氏によるもの)。

グレート・ギャツビー
グレート・ギャツビー

翻訳小説において必ず付きまとうだろう「登場人物の名前が覚えられない」問題が発生したものの、 本作における最も重要な、それこそ「失われた世代」ならではの読後感を味わうことができた。 「都会、金、そして女に対する憧れと喪失」。 それを甘美といってもいいのだろうか、美しく、文章として仕上げていく様はみものであり、 これこそが村上春樹を村上春樹たるものにしたのではないか。 付け加えて、物語に登場する人物達が小説の中で生きている感覚を覚えるし、 後半に急展開するストーリーは息を飲む。

90年代の日本を過ごした俺達がはたしてロストジェネレーションなのかはわからない。 ただ、グレート・ギャツビーにおける「失われた感覚」は自分にとって、 不思議と違和感の無く入り込んでくるものだった。 以下に、物語の中盤、ストーリーが一転する場面。 一応の主人公ニックが独白する文章を引用して、書評を終わりとする。

「いや・・・・・・ぼくはただ今日がぼくの誕生日なことを思い出していただけさ」
ぼくは三十だった。 前途には、新しい十年の無気味な歳月がおびやかすようにのびていた。

(中略)

三十歳――今後に予想される孤独の十年間。 独身の友の数はほそり、感激を蔵した袋もほそり、髪の毛もまたほそってゆくことだろう。 しかし、ぼくの傍にはジョーダンがいた。

(中略)

車が暗い端を渡ったとき、蒼ざめた彼女の顔が、 ものうげに、ぼくの上衣のかたにもたれかかってきた。 そして、ぼくを励ますように堅く握りしめていくる彼女の手に、 三十歳のぼくの衝撃は消えさってしまった。

こうしてぼくたちは、涼しくなりかけた暮色の中を、死に向かって疾走していったのだ。

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