2025年を振り返ってみる。 今日は大晦日。ギリギリだ。
色んな場所に行き、色んな人と出会った1年だった。 一つ一つのトピックを見ていく。
Hono
相変わらずHonoのメンテナンスをしている。Honoの「Initial Commit」は2021年の12月。開発から4年経った。
Honoは多くを変えた。一つは僕の職を変えた。HonoがキッカケでCloudflareに入社することになった。 多くの人間関係を変えた。Honoが色々な人を繋げた。 そして、JavaScriptバックエンドのエコシステムを変えた。これはオーバーな表現ではない。
2025年のHonoの動きは一見微かである。
年初にリリースされたのが「v4.6.16」で、現在の最新版が「v4.11.3」となっている。
つまりマイナーバージョンアップが5個だけインクリメントされただけで、メジャーバージョンアップはない。
これはまぁ、意図的というか「必要がなかった」というのが正直なところで、honoパッケージ自体のAPIや機能はだいぶ固まっていることの裏返しだと思う。
やるとしたら、型のパフォーマンス向上のために型の持ち方を変える破壊的変更を入れるか、レスポンスを検証するための機能を入れるかとか、薄いContextを導入するとかだが、今のところは具体的なアイデアもない。
動きがないように見えて、やることは大量にあった。
Honoは3rd-Partyミドルウェアといってgithub.com/honojs/middlewareモノリポ配下にコアパッケージとは別の第3者が作ったミドルウェアパッケージが置いてある。
その数、現在45パッケージ。基本的には作者にディスパッチすればいいのだが、基本的に最初のハンドリングは僕がやる。
また、それ以外にも、honojs/website、honojs/node-server、honojs/vite-plugin、honojs/create-honoといった10個以上のレポジトリをHonoは持っている。
そこの全てのIssueとPull Request(PR)を見るのはかなり骨が折れる。
例えば、2日間ほど放置しただけで(実は年末に来て体調を崩した)、13個のIssueもしくはPRがGitHubのInboxに溜まる。
これを僕は今から一つ一つ見ていかなくてはいけない。いくつかはノールックでマージできるものもあるが、解決するのに数時間かかるものもある。 後述する「OSS開発者の憂鬱」的な話である。この憂鬱をどうしていくかは2026年、本気で考えたほうがいいだろう。
とはいえ、2025年もHonoの快進撃は止まらなかった。GitHubスターは28Kになった。
これは日本人発のOSSで3位か4位らしい。少なくとも4位の数字である。
また、npmパッケージのダウンロード数も月間2,000万。相対的に言えば、目標だったJavaScriptフレームワーク「Fastify」のその数を超えた。
Cloudflareではインターナルで多くのプロダクトで使われているし、Mastraが内部のサーバーとしてHonoを採用した。 最近では、MCP公式のTypeScript SDKが使い始めた。
Honoは(おそらくあなたが知らないほどに)大きくなった。 そして、JavaScriptエコシステム、コミュニティ、そして僕の人生と多くのものを変え続けている。
Cloudflare
CloudflareのDeveloper Advocateとして働いている。 2023年の4月に入社したから、もう2年半以上になる。 Cloudflareが初めての会社員体験なので、それが自分的に長いか短いか判断しかねるが、よく続いてると思う。
僕はインターナショナルなDeveloper Relations(DevRel)チームに所属していて、メンバーは各地に散らばっている。これは本当に散らばってる(僕がこのチームの好きなことの一つだ)。
- US - オースティン
- US - ロサンゼルス
- US - サンフランシスコ
- US - ニューヨーク
- UK - ロンドン
- オランダ
- ドイツ
- インド
- オーストラリア
- 日本
時差とか大変だが、僕の場合はアジア一人でもなんとかなっている。 主にやることをこの4つにして一人で自由にやっている。
- Honoの開発
- イベントの開催
- イベントの登壇
- 日本チームのサポート
ちなみによく「Honoの開発ってCloudflareの業務でやってるんですか?」と聞かれるが、業務でもやってるし、個人の趣味の時間でもやってる。 業務でやれる理由は3段論法的にこうだ。
- HonoはCloudflareのアプリ作成を助ける
- 私はHonoを開発している
- ゆえに、私はCloudflareのアプリ作成を助長している
上記した通り、Honoの開発は変わらず続けている。イベントについては後述する。
やっていることに「日本チームのサポート」が入ってるのが興味深い。 つまりインターナショナルなDevRelチームとは別に、日本の顧客を対象とする日本の営業の人たちに協力することがある。 「開発者プラットフォーム」という開発者向けの製品の説明やワークショップをしたりする。 また、僕はいうても有名人なので、お客さんのミーティングにダマテンで参加すると驚かれることもあったりして重宝がられる。
日本チームでも活動することは良い面があって、インターナショナルなチームに加えて「日本」という居場所を作ることで、一方がダメになった時の保険を作ることになる。 また、政治的な意味合いでも味方を作ることは大事だ。 その結果、仲のいい同僚も増え、18時の飲み会から深夜まで一緒に遊ぶことなんてもある。
これらの活動はCloudflare的に大きなインパクトはあるのは確かだと思う。 僕のおかげでCloudflareを知って、イメージも良くなったと考えている人は少なからずいる。 ここ最近、DevRelチームの体制が変わったので、2026年は違う動きをしなくてはいけないかもしれないが、自由にやっていきたい。
Workers Tech Talks
今年は本当にイベントをたくさん開催した。
特に「Workers Tech Talks」というCloudflareの「Cloudflare Workers」をテーマにしたミートアップをたくさんやった。
- 2025/1/23 - 東京
- 2025/3/12 - 大阪
- 2025/5/3 - 東京
- 2025/7/22 - 京都
- 2025/8/26 - 新潟
- 2025/9/9 - 北海道
- 2025/11/13 - 福岡
僕が一人で企画を立てつつ、会場を提供してくれる方々と協力してやるイベントだ。 東京の場合は100人近く、他の地域は30人程度まで参加する。 中身はその名の通りテクニカルなトークで構成されていて、トークが終わったら全員で集合写真を撮って、会場でピザをとったり、居酒屋に流れて懇親会をする。
入社した2023年からやっている試みだが、なかなかいい。 Cloudflareサイドの人が一方的に話すのではなく、ユーザーサイドの開発者がトークをするのが特徴だ。 トークの時間は休憩を挟んで2時間確保するのだが、飽きずに全部聴ける。 Cloudflareにはデータベースやオブジェクトストレージなど様々なプロダクトがあるのだが、それらを使った「Cloudflare Stack」を活用したリアルワールドの活用例を話す人が多くなっていたのが嬉しい。
トークの時間はスピーカーが主人公だ。 様々な人にフォーカスを当てることが出来たのはこのイベントをやっていてよかったこの一つだ。
Workers Tech Talks in Austin
Workers Tech Talksは今年7回、当初から合計すると11回やった。 そして、2025年12月。12回目にして、いよいよ日本を飛び出して海外でやることになる。「Workers Tech Talks in Austin」である。
12月頭にDevRelチームのミーティングがアメリカ・オースティンで行われることになった。 そこで以前、来日した時にWorkers Tech Talksに参加したことがあるチームメイトのKristianが提案してくれた。
Hey man! What do you think about doing a Workers Tech Talk in Austin in December while you’re in town?
このメッセージを受け取った時、僕は震えた。 「次は名古屋に行くかな」「会津大の学生が近くでやってくれって言ってたな」などと日本国内だけを考えていたのが(もちろん名古屋でも会津でもやりたい)、 急に世界に広がった。
日本のカンファレンスで話していた人が「海外カンファレンス登壇」するのならまだ分かる。それはなかなか経験できないことだが、チャレンジとして割とある話だ。 だけど、この場合は「日本でやっていたイベントを海外でやる」ってことだ。 珍しいことだし、想像に及ばないことだった。 もしくは冗談で言う類のものだった。それがKristianの一言で現実となる。僕は彼のメッセージに「Let’s do it」と返信した。
会場の手配、スピーカーのアサイン等、ほぼ全てをKristian含め他のメンバーがやってくれた。 僕はイベントのフォーマット、つまりトークは20分で5分のLightning Talks(LT)を入れるといいとかを指示するくらいだった。 そして、12月3日にWorkers Tech Talks in Austinが開催された。 参加者は65人と初めての試みとしては大満足の数字。 雰囲気はちょっとした緊張感。みんなはじっとスピーカーのトークを聴く。日本のWorkers Tech Talksと変わらない。「これこれー!」。
僕はせっかくだからとLTで話した。 「LTは5分」というセリフを要所要所で散りばめ、早口でまくし立てるという本気のLTをしてウケを取れた。
何よりもハイライトだったのは、最後に話したのがKentonだった。 KentonはCloudflare Workersの生みの親で、2017年にブラウザで動くV8のエンジンをサーバーサイドで動かしJavaScriptを実行可能とするというアイデアを実装した天才エンジニアである。 稀に見るワールドクラスだ。 僕はKentonに話してもらうようKristianにリクエストした。 曰く、声をかけた当初は「No」と言ったが、ひるがえってOKを出してくれた。
海外で初めてやったWorkers Tech Talksの最後をWorkersの生みの親であるKentonが締めくくるのは、いわゆる「エモーショナル」でとんでもなく嬉しい出来事だった。 Kentonを隣にして最後に撮った集合写真は僕の宝物である。
ミートアップ
Workers Tech Talks以外にもミートアップをいくつか開催した。
- 2025/5/14 - AI Developer Meetup in Tokyo
- 2025/2/19 - DevRel Talks! in Tokyo
どちらも100人弱の参加者で一人でやるミーティングとしては大きい規模である。 会場の協力のおかげもあって(サイボウズさん等々ありがとう!)、このレベルのイベントの企画と仕切りはお手のものになっている。 特にこの2つは、前者が元Eleven LabsのThor、後者が元VercelのLee Robinsonの来日に合わせて開催したのもあり、海外のゲストのハンドリングもうまくできる。 参加者の満足度も異様に高い。
最近気付いたのだが「それもそのはず」だ。 僕は少なくとも15年前の2010年の「Perl Casual」からこの手のイベントを自分で開催している。 経験がある。この経験を活かしてみんなが楽しいと思えるイベントを2026年もやれたらよい。
Hono Conference
2025年のハイライトの一つはHono Conferenceをやれたことだ。
今年のHono Conferenceは去年7月にやったものに引き続き2回目となり、10月18日に開催した。 去年は100人弱だったのが(それでもすごい数字だが)、今年は184人参加した。 4年前、一人デスクに向かい開発していたHonoが今や184人、しかもオフラインで人を集めたのは感無量である。
Hono Conferenceではやりたいことをやれた。 分かりやすくキャッチーな事実は「自分が作ったソフトウェアのカンファレンスで実行委員長をやってLTでドラを叩いた」ことだが他にもたくさんある。
まずはコントリビュータへの還元である。それをHono Awardsという形で影響を与えた3人のコントリビュータを表彰した。
次にヒーローを生むこと。 今回のヒーローはnakasyouだ。元中学生コントリビュータ・現高校生コントリビュータという強烈な肩書きに劣らず、nakasyouの視点は切れ味がある。 コントリビュータでありヘビーユーザーでもある。 第1回目のキーノートはusualomaさんに頼んだが、今回は真っ先にnakasyouに相談した。二つ返事でOKをもらった。
nakasyouのキーノートは素晴らしいものだった。本当にヒーローだった。参加者は彼に釘付けになった。 もちろんHonoがなくても彼はヒーローになる。だけども、Honoが少しでもnakasyouを持ち上げるきっかけになったら、それはすごく嬉しい。
トークはユーザートラックとディープトラックという括りにした。ユーザートラックはその名の通り、Honoユーザーのトーク。 ディープトラックは海外ゲストとプラットフォームサイドのトークで構成された。僕は主にディープトラックを聴いていたのだが、全部面白かった。 びっくりするほど面白かった。
参加者の評価が異様に高かった。アンケートの結果も高得点で例えば「満足度」は10点満点中10点が70%、5点以上に全員が収まっていた。 アンケートで興味深いのが、「普段のロールについて教えてください」という質問では「フロントエンド」と「サーバーサイド」が同数だったことだ。 これはなかなか珍しい。ある意味「Hono特有」のコミュニティが形成されてるのだと思う。
スポンサーが豪華だった。メディアスポンサーを合わせると22社。海外のスポンサーもいた。CloudflareとVercelが横並びするイベントは他にはないと思う。 これだけのスポンサーに対応するのは大変だ。特に海外のスポンサーは契約書を作ったり、請求書の方法が独特だったり、送金に時間がかかったりと難しいことばかりだ。 それでも、やってもらっただけの価値がとてもある。Honoに箔が付く。これだけの企業さんがHonoを支えてくれる。 そうした事実を作りたかった。
クロージング、「One More Thing」でHono CLIを発表した。Hono CLIの説明はここではしないが、とにかく「新しいこと」を発表した。 それまでは誰にも明かさなかった。いや、usualomaさんだけ知っていた。 2週間ほど前のスタッフとのミーティングで「One More Thingやりますか?」という話があって、当初はやる気がなかったのだが、以前からHonoにまつわるコマンドが欲しいとは思ったので、10日ほどでエイヤでusualomaさんと一緒に作った。 その日々は本当に楽しかった。イベントの準備しろって感じだが、久しぶりに新機能を開発するのは爽快だった。 早く誰かに話したくてしょうがなかった。それを素晴らしいイベントの一番最後に話せるのは、職権乱用と言われようが最高の体験だった。
去年はHono Conferenceをほぼ一人でやったが、今回はスタッフを集めてみんなでやった。みなさんイベント経験者で頼りになった。ここまで出来たのはみんなのおかげだ。 感謝している。
Hono Conferenceで言及するべき最後のことはAdityaだ。AdityaはHono関係のライブラリを作っていてHonoが大好き。Honoのエコシステムに影響を与えたとして、Hono Awardsを受賞してもらった。普段インドで活動しているのだが、5月にWorkers Tech Talksのために来日することがあった。その時に焼肉屋連れて行ったのだが、彼は執拗に「今年はHono Conferenceやらないのか?」「やるんだったらスポンサーする」と言ってきた。当時僕は全くHono Conferenceをやろうと思っていなかったので、最初は「面倒だな」なんて感じていたが、彼の熱意でやろうと決意し、スタッフを集めだした。そして当日、Adityaはゲストとして参加した。Adityaがいなかったらこの高みはなかった。ありがとう。
Hono ConferenceのコンテンツについてはメディアスポンサーのFindyさんの素晴らしいレポートがあるのでそちらを見て欲しい。
- Hono Conference 2025 ── 「Hono CLI」発表。AI時代に、コミュニティと進化するWebフレームワークの姿
- “You might not need Hono” 高校1年生のコントリビューターが語るHonoの未来
OSS開発者の憂鬱
「OSS開発者の憂鬱」は去年から温めていたネタだ。
元々は去年2024年10月に函館で行われたYAPC::Hakodate 2024のプロポーザルとして提出していたものだった。 ところが、その年の夏に半月板の手術をすることになり、流石に松葉杖で函館に行くのは大変だということで辞退していた。 採択結果が出る前だったので通過したかどうかは不明だが、fortee上で星をたくさん集めていたのでプロポーザルの時点で人気だったのは確かだ。
今年の11月25日、YAPC::Fukuokaでは同テーマでプロポーザルを提出し、採択。満を持しての発表となった。
YAPCは僕にとって最大限に大切なイベントである。 それが高じてCloudflareのマーケティングチームにスポンサーをすることをだいぶ強く訴えたくらいだ (その証拠にCloudflareはプラチナスポンサーとTシャツスポンサーをした)。
この発表に対する意気込みは異常に高かった。 YAPCだし、時間をかけたネタであるし、3度目となるベストスピーカー賞を取りたかった。 けれどもテーマがテーマだ。 Honoを開発する上で苦労した点をピックアップするというもの。 これは結構辛い作業だ。 当然だけど楽しいことを考えるより苦しいことを考える方がはるかに辛い。
OSSにおいては国や年齢、環境が違う見知らぬ人達がIssueやPRを投げてくる。 Honoの場合、扱う範囲は広く、Webの基礎技術からセキュリティ、ライブラリの活用までと多岐に渡る。 さらにコンテキストスイッチが毎回発生する(一連の問題を「登山すれ違い問題」と名付けた)。 中には心無いコメントをする人もいる。 ただただ辛い。まさに憂鬱だ。
それでも希望はあった。 今では、Issueに反応したり、FixのPRを作ってくれる仲間がいる。 Hono Conferenceもやった。コミュニティもある。 いろんな人たちが僕とHonoを称えてくれる。コントリビュータは600人を超えた。
そんなことを話した。 完璧に準備しただけあって、正確に伝わったと思う。 トークの最後の方は感動的な話なので、毎回練習をしていて泣けてきて、大丈夫かなと心配していたが、それもなく話せた。
クロージングのベストスピーカー賞の発表が楽しみだったが、逃した。 sosuke君の「一人で大規模OSSに立ち向かうには」が受賞した。 すごく悔しかったが、そのトークを前日に目の当たりにしており、あまりにもよかったので納得でもあった。
ところで、sosuke君とは最近何かと縁がある。 直前のHono ConferenceでもBunのことについて話してもらったし、去年のさくらじまハウスでも同じ登壇者だった。 他のイベントでもちょくちょく会って話をした。 「HonoをBun上で高速に動かすには」みたいなテーマでよく話す。 彼のテクノロジーに対する正確な知識とモチベーションは聴いていて痛快だ。 また、彼は(現Anthropicの)Bunに就職した。なので「海外の会社で働く」という共通点もある。 良し悪しじゃないが、それで言うとsosuke君の方がずっと先を行っている気もする。 久しぶりにロールモデルを見つけてちょっと嬉しい自分がいる。 ちなみに、この2025年振り返りはsosuke君が書いたエントリーに感化されて書いてる。
OSS開発者の憂鬱の話に戻ると、この憂鬱は現在進行系で続いている。 少しでも憂鬱を晴らすアイデアはあると思う。2026年のテーマだ。
ワールドツアー
今年の中旬から日本各地、そして世界と色んなところに行った。ワールドツアーと名付けた。
- 7月 京都(Workers Tech Talks)
- 8月 甲府(Kofu.なんか)、新潟(Workers Tech Talks)
- 9月 北海道(Workers Tech Talks & フロントエンドカンファレンス北海道)
- 10月 東京(Hono Conference)
- 11月 福岡(Workers Tech Talks & YAPC::Fukuoka)、台湾(JSDC)
- 12月 USオースティン(Cloudflare DevRelミーティング)
果たしてやりきれるか不安だったけど、なんとか達成できてよかった。 その代わりすごく疲れた。なかなか「疲れた」とは人前で言わないたちなんだが、かなりぼやいた。 あまりにも疲れたので、1ヶ月間有給を取った。
言及していないイベントで印象に残っているのがJSDCである。 JSDCとは台湾で行われるJavaScriptの大きなカンファレンスである。 500〜700人参加するとのことで、蓋を開けると少し少ない気がするが、大きいことには変わりはない。
そのカンファレンスに僕は招待された。渡航費とホテル代を支給してくれるとのこと。 最初、この連絡をもらった時に受けるかどうかかなり迷った。 海外カンファレンスなので英語で話さなくてはいけないし、尺は40分だ。 それに、開催日の翌々日にはCloudflare DevRelチームのミーティングのためにアメリカに向かわなくてはいけない。 でも、せっかく招待してくれたしってことでエイヤで出ることにした。
トークはHonoをテーマにした。ある程度練習してたので、なんとかなった。 大変なのは、その後だ。AIをテーマにした。パネルディスカッションに参加することになってしまった。 断ればいいのに、ついOKしてしまっていた。 英語は得意ではないし、実はそもそもAIのディスカッションにはあまり興味がない。 結果はまぁ大変だった。
そんなJSDCだが、大収穫があった。TejasとEvan Youに会えた。
TejasはIBMの人だが、IBMのことは全く語らず、Reactの本を書いてるらしいが肩書がなんのかよく分からない。
Evan Youは言わずとしれたVueとViteの作者だ。
この2人はすごい。ワールドクラスだ。 何がすごいって、英語が上手くない僕でも10言えば、100理解してくれる。 何でも「Interesting」って言ってくれる。 だから会話が長く続く。 テクニカルなことじゃなくても、会話から彼らがワールドクラスであることが分かるのだ。
懇親会が終わって、ホテルが僕ら3人が一緒だったのだので同じタクシーで帰った。 「タピオカ」は英語なことについて。台湾の人がつけてる数珠について。日本における数珠の意味。 ドイツでは国教がないこと。日本にはトイレにも神様がいること。 中国の人が日本に来るモチベーションについて。浜崎あゆみの中国公演について。 その時に「自由にコミュニケーション出来てる」感じがとても楽しかった。
人と出会う
とにかく多くの人に出会った。
毎年多くの人に出会うのだが、例年にないのは、今年は海外の人とたくさん出会ったことだ。 「日本に行くから会おう」と言ってくる。 こうして日本で会ったのはこちらの人たちだ。Cloudflareの人だけじゃないのも面白い。
- Rishi - Codegiantというサービスをやっている。日本大好き。
- Lee Robinson - 元Vercel、現Cursor。Next.jsを広めた功労者である。
- Thor - 元Eleven LabsのDevRelっぽいことをしてる人。
- Ricky - 元Cloudflareの元僕のマネージャー。
- Michael - Cloudflare所属、元チームメイト。オーストラリアにいる。
- Tanmay - Cloudflare所属、コミュニティマネージャー。
- Aditya - Honoコントリビュータ。現Sentry。
- CJ - Syntaxの人。YouTubeをよくあげている。Hono大好き。
- Kristian - 同僚。親友。
- Kevin Yang - Cluelyというサービスをやってる人。
- James Snell - Cloudflare所属、JavaScriptのすごい人。
こういう話があると、だいたい東京駅近くにある新丸ビルの7階にある寿司バーに一緒に行く。 ここはすごい美味しい寿司を食べることができるが、すごく高くはない。なのでちょうどいい。 そして、食べ終わったら、バルコニーに出て、東京駅をバックにセルフィーを撮る。
みんないい奴でこちらも全力でもてなすので僕と日本を気に入ってくれる。 Rishiなんて、日本、とりわけ僕の地元である横浜が気に入って、3ヶ月も滞在したくらいだ。 その間、よくご飯を食べにいって、一番飯行ってる友達になった。
世界に友達ができるのは楽しい。
来るもの拒まず
Adityaからの言葉でHono Conferenceをやったことも、JSDCの登壇を引き受けたことも、海外からの人に会うことも、Workers Tech Talksをオースティンでやる時も、全て来るもの拒まずの結果である。「来るもの」には最初ビビる。例えば、海外から人が来ます。1対1で相手をしなくては。という時には多くの人は緊張するんじゃないだろうか。 でも、全部やった。 その結果、とんでもないところへ行けた。例えば、ワールドクラスに出会えたし、Workers Tech Talksでワールドクラスが話してくれた。
来るものを拒まなければ先にいけるのだ。それを体現できた2025年だった。
その代わり。能力が追いつかなくなることも知った。 例えば英語。今まで根性と度胸でなんとかやっていたのが誤魔化しが効かなくなる。いくら会話が成立してても、今のレベルだと思考が1歩、2歩遅れる。 すると大したことが言えない。 だから鍛えなくてはいけない。2026年やることが出来た。
料理
今年はたくさん料理をした。 2月頃かな?ファビオっていうイタリア人っぽい名前だけど、実物は優しい感じのお兄さんといった方がやっているYouTubeをひたすら見始めた。 ひたすらパスタを作るんだけど、見ていると作りたくなる。 料理はプログラミングと似ていて、完成したらすぐに評価することができる。 つまり、作ったらすぐ食べることができるのが気に入った。
僕はファビオを真似てパスタを、多い時は週5くらいで作った。 塩が味を決めることを知った。アーリオオーリオのオイルベースを作れば応用が効くことを知った。アルミのフライパンを買ったら、乳化が出来た。 そして、パスタを作るのが上手くなった。 今からプログラミングが上達することはあるにしろ、ここまで振れ幅はないだろう。
一方で、料理をするのは仕事にいい影響があると思う。 いい気分転換になる。パスタばっかり食べてたらヤバいが、パスタ以外にも健康的な物も作れる。 何よりも楽しい。 来年も料理をたくさんする。
健康
案外、元気である。 相変わらず中性脂肪と血圧は高めだが、大きな怪我もしないし、風邪だってひかない。 これはひとえに「物理的に」動いてるからだと思う。
まず筋トレとウォーキングをしている。 筋トレと言っても自重トレーニングってやつでスクワット、腕立て、プランク、クランチをほんの少しずつ。 ウォーキングは早歩きを4キロ。
あと、実は夕食後にカラオケに行ってる(笑)。 多い時は週4で行ってて、まねきねこの会員証がいつの間にか「ダイアモンド」になった。 歌うのは上手くなくて、人に聴かせるためのものではなく、ほんとにこれは自分で満足するためだけのもの。 ほんとに趣味。
一日でかなり動いている。激しい時はこんな感じだ。
- 朝起きる
- 仕事する
- 昼ご飯作る
- 昼寝する
- 仕事する
- 買い物する
- 筋トレ・ウォーキングする
- 夕ご飯作る
- カラオケに行く
身体を動かすと精神的にもいい影響がある。 よく、シャワーを浴びている時にアイデアが湧くというが、僕の場合ウォーキングをしている時にそれがよく起こる。 しかも歩くのは横浜の大さん橋というところで、ここが「横浜の景色が一番よく見える場所」であり、歩いていて本当に心地が良い。 やけにテンションが上がって、楽しくなる。悩んでいたことが消えて、やれるって思える。 だから、疲れている時こそ積極的に動く。
2025年、健康であれたことをありがたく思う。2026年も健康でいたい。
友達
本当に友達に恵まれている! 先ほど紹介した通り、海外の友達もいるし、昔からの友達もいるし、新しくできた友達もいる。 界隈も違えば、住んでる場所も違う、付き合ってる年月も違う。相手は友達だと思っていないかもしれない。 それでも人に恵まれている。
幸運なことに10月25日のOasis再結成来日公演のチケットが当たっていた。 2枚持っていたが、一緒に行く人がいなかった。散々迷ったけど、やっぱり高木くんと一緒に行くことにした。 高木くんとは10年以上の仲だ。 彼と出会うずっと前。2002年。僕が大学3年生の頃。高木君が中学2年生だった頃。 僕はOasisライブを見るためにはるばる仙台まで行って、ライブを見ていた。 その頃仙台に住んでいた高木君はチケットが持っておらず、泣く泣く会場の外から漏れる音を聴いていた。 それが2025年、東京ドーム。再結成したOasisを隣り合って見ることになる。 一緒に見る相手としては最高の友達と見ることができた。
他にもたくさんエピソードはある。2026年も楽しい瞬間をたくさん作れたら嬉しい。
2026年へ
でかい話だが、生きることの価値ってのは「人生のハイライト」をいかにたくさん作れるかだと思う。 2025年はその瞬間がたくさんあった。 来年もこういうハイライトをたくさん増やせればいいなと強く思う。